2018年から2020年前半までと、モデルの販売期間が短く、中々情報が少ないですが、非常に良い車なので改めてご紹介したいと思います。
S560 S63 S65 カブリオレとは
SクラスのW222型の派生で、2ドアクーペのオープンカーです。
SクラスクーペがC217、カブリオレがR217です。
メルセデスのトップモデルであるSクラスでのオープンは1970年以降は販売がなく、久々に復活したモデルです。
近しい車としては、ベントレーのコンチネンタルGTコンバーチブル、ロールスロイスのドーン、マセラッティのグランカブリオなど、ラグジュアリーに4人が乗れるオープンモデルです。
普通のオープンカーの場合は、純粋な2シーターやいわゆる2+2と呼ばれる緊急用に使うような4人乗りが多いですが、このSクラスのカブリオレは、後ろの席も比較的乗り心地がよく、後席に大人も乗れるオープンカーです。
Sクラスセダンよりは、乗り心地は少し落ちますが、ほぼ近い乗り心地で、極上の乗り心地と言ってもいいでしょう。
窓はペアガラスになっており、ソフトトップのルーフも多重構造になっていて、Eクラスセダンよりも静粛性が高いです。
もちろん、オープンカーとしての出来も素晴らしく、首筋を温めてくれるネックヒーターや、後ろからの風の巻き込みを抑えるウィンドディフレクターもポルシェ911やBMWの8シリーズカブリオレ、レクサスのLCコンバーチブルでは、後席が使えなくなってしまいますが、Sクラスカブリオレの場合は、後席をそのまま使え、さらには自動格納してくれます。
ラグジュアリーさも、Sクラスの上位パッケージのエクスクルーシブパッケージがデフォルトなので非常に感じられます。
また、4リッターのV8ターボエンジンでの心地の良い加速性能と、エンジンサウンドも持ち合わせているため、非常に優雅に乗ることができる車です。
S560とS63,S65AMGモデルとの違い
ほとんど同じ車ではありますが、スポーツモデルとして、エンジンやサスペンションの味付けなどが違います。
- 乗り心地が僅かながら固めでスポーティ寄り
- エクステリアがパナメリカーナグリルなどが採用され、特別感や高級感がある
- エキゾースト音を可変可能
- サスペンションや走りに関するモードが充実
特に大きいのは、S560の場合、インディビジュアルモードに設定する場合、エキゾースト音を個別に設定できないため、パドルシフトでのMT運転+スポーツモードのエキゾースト音設定ができないため、高回転までエンジンを回しても音が物足りなく、十分に楽しむことができないのが難点です。
S63について
S63の場合は、バブリング時のバックファイヤー音も大きく、加速したときのエンジン音も気持ちが良いものです。
また、日本では4WDのみの展開になりますが、4WDによる安定感は雨の日や雪の日など乗る場合は、安心感があります。まさにパーフェクトな車とも呼べます。
S65について
S65はその本当に個体数が少なく、乗る機会がないので詳しいことは書けませんが、V12エンジンを搭載し、FRのみ。またエクステリアも細かな部分でラグジュアリーさが増しています。FRのみなのでステアリングの軽快さはあります。
S63はスポーティに乗りたい人向けで、65はどちらかというとよりゆったりと乗りたい人向けのようです。
ファミリーカーとして総評
私は今ファミリーカーとして乗っていますが、この車は唯一無二な車だと思っています。
- 希少な大人4人まで乗れるオープン。
- オープンエアーを楽しめるドライブは最高で大人も子供も喜びます。
(寒い日は問題ないですが、日差しが強い日は厳しい) - 屋根を閉じると、Eクラス以上のSクラスセダンに近い静粛性と乗り心地
- スポーツモードにすると軽快なV8エンジンサウンドも楽しめる
- トランクは屋根を閉じていても約250リットルと十分。
(リモワのスーツケースのCLASSIC Check-In L(高さ79cm x 幅53cm x 奥行き 28cm)が入って少し余裕があります。屋根を閉じるとスペースが広がるためもっと詰めます。) - 日本で使うには丁度良いギリギリのサイズ感。
(室内空間のゆとりと、扱いやすさだと1,900mmぐらいがバランスは最高です。駐車場もロック式だと1,900mmで設計されているケースが多いため、実寸はAMGラインで1,910mmとなっていますがほぼ1,900mmのサイズ感で停めやすいです。)
ファミリーカーとして普段使いするデメリットとしては、やはり2ドアな点で後席を降りるときの手間でしょうか。
あとは、価格がどうしても高額なところです。(既に新車販売は終わっていますが、2,260万円~)
競合車種コンチネンタルGTコンバーチブルやドーンとの比較
新車価格が2,000万を超える価格帯になってきて、コンチネンタルGTコンバーチブルやドーンは3,000万を超えてくるため競合は、S63,S65になります。S560は乗り心地重視でしょう。
サイズ的には、BMWの8シリーズのカブリオレや、レクサスのLCコンバーチブルも競合と呼べますが、後席の背もたれが直角に近く、4人ゆったりは乗れないので難しいところです。
競合車種と比較した時のメリット
このクラスになってくると、どれも乗り心地は一級品です。グランカブリオがスポーティ寄りなので若干劣ると思いますが、他は肉薄しているでしょう。
メリットの1つ目は、メルセデスの技術性能でしょう。
インテリジェントドライブなど、安全性能や自動運転などの技術はベントレーやロールスロイスをリードしています。
ベントレーはフォルクスワーゲングループのアウディの技術を、ロールスロイスはBMWグループとして、BMWの技術を導入する流れですが、どうしても少し遅れ気味になります。
2つ目は車のサイズと重さです。
狭い日本だと、横幅1910mm、長さ5,030mm、重さ2,160kgというサイズと重さは機械式駐車場に入りやすいため、特に都市部では重宝します。S63の場合は、2,230kgと、2,200kg制限をオーバーしてしまうのは注意です。
私が所持している理由もこれが大きいです。横幅1,950mm以内、重さ2,200kg以内という基準の機械式駐車場は多く、停められるマンションの数が大きく増えます。特に東京都内は引っ越した時先に駐車場がない問題が多いです。
3つ目は、2,000万円を超えてくるラグジュアリーカーなのに目立たない所です。
ぱっと見たときはEクラスクーペとフロントが似ていたりするので、目立たないというのもメリットと言えます。
ベントレーやロールスロイスは、東京都内でも数が少なく、目立ってしまいますし、オープンにするとより視線を集めやすいため、気軽にオープンを楽しみたい場合はメリットにもなります。
競合車種と比較した時のデメリット
逆に今度は、デメリットをあげていきましょう。
不満の少ない車ですが、2000万以上の車と考えた時の、先程提示したエクステリアの物足りなさでしょうか。フロントやリアのライトは、見比べるとスワロフスキーを使われていたり、細かいライトの形状なのですが、グリルはダイヤモンドグリルでEやCクラスクーペとほぼ同じです。
この価格帯になってくると差別化も大事な要素のため、目立たないのはメリットにもなりますが、デメリットとも言えます。
また、グランカブリオと比べたときは、エキゾースト音の物足りなさやスポーティさは劣ります。
こちらはAMGのS63であれば、そちらで解決することはできます。
こんなに素晴らしい車なのにもう生産されない?
非常に良くできた車ですが、先日フルモデルチェンジを迎えた新世代のSクラスのW223型では、セダンのみで、クーペとカブリオレは作られないと噂されています。
こちらの記事でSクラスの生産停止について解説されています。
メルセデスは、ベントレーやロールスロイスよりは大衆寄りで、数を多く販売して利益を上げるスタイルなので、数がでないと難しいのかもしれません。
今後はガソリンモデルも少なくなっていくため、この軽快なエンジンサウンドと全員が乗り心地がよくて、ドライブを楽しめるオープンモデルは最後なのかもしれず、大切にしていきたいと思っています。
前期モデルのS550カブリオレとの違い(2016~2018年モデル)
中々ネットに情報がなく、困っている人のためにS560カブリオレとS550カブリオレの違いをまとめておきます。
基本的にはベースの乗り心地など、走りに関する車の性能はほぼ変わらないです。セダンの550と560の関係とほぼ同じです。
大きく変わるのがインテリジェントドライブなどシステム面です。
S550世代にないものは、
- 高速道路での渋滞時、停止しても30秒以内なら自動発進してくれる機能がない
- 高速道路での自動でのレーンチェンジがない
- 上記に付随しますが、ステアリングアシストの精度が低い(前車追従の精度の高さが違う)
- Mercedes me connect(メルセデスミーコネクト)が非対応。スマートフォンでのリモートでのドアロックができなかったり、車両状態の確認ができない)。
特にナビに目的地を設定する際には、既存のナビの使い勝手が非常に悪いので、スマホから送ってナビに連動するのが非常に楽です。
このように、普段使いするにはかゆいところに手が届く機能がないのが地味に痛いところですので、可能な限り2018年以降のマイナーチェンジ後をおすすめします。
Sクラスカブリオレのリセール・価値
中古市場ではS550は見受けられますが(それでも多くない)、560は特に生産期間が短いため、かなり少ないです。この世代のS63,S65カブリオレも少ないので非常に貴重な存在となっています。
通常のSクラスセダンよりは、リセールは良い傾向にあります。
ただし、車両価格が非常に高いモデルなので、その分の下落幅は大きいでしょう。
1968年式のSクラスカブリオレ 280SE 3.5 カブリオレが1,400万円(2021年2月時点)することを考えると、この先、もし生産されない場合は、最後のガソリンモデルとしても非常に価値がでる可能性は秘めています。
最後に
Sクラスカブリオレは、大人4人が快適にオープンドライブを楽しめる非常に贅沢な車です。
日本ではオープンカーを購入する人は欧米に比べるとかなり少ないです。
Sクラスに限らず、オープンモデルは、技術の進化により、オープンモデルであってもセダンやクーペと遜色のない剛性性能・静粛性を持つようになってきていますので、クーペを買うのであれば、オープンモデルを買うのをおすすめします。
1つの車で2つのバリエーションを楽しめるのは間違いなくお得感があります。
サンルーフがリセールに影響するように、開放感のあるオープンエアドライブは風を感じることができ、青空や星空が見え、さらにはエンジンサウンドも楽しめる非常に価値があるものです。
Sクラスのクーペ・カブリオレはドライバーズカーとしても非常に優れているため、ガソリンモデル・そして新型のSクラスの機能を備えて再度販売していただけるのを願います。